- 概要:
本当にあの人だけは愛しつづけました --- “わたくし” が愛した女には、夫がいた。
学生時代、京都の下宿で知り合ったときから、 “わたくし” の心に人妻へのほのかな恋が芽生え、そして二十余年。二人は心と心の結び合いだけで、相手への純真な愛を貫いた。
ストイックな恋愛を描き、ゲーテの 『ウェルテル』 に比較される浪漫主義文学の名作。英、仏、独、中国語など六カ国語に翻訳された。
感想: ★★★★ 変質者を思わせるほどの濃厚さと執拗さを基調としたこの作品は、戦後の青年子女に多く愛読されたのだという。 おそらく、こういうカタチの恋愛が理想とされる時代であったのだろう。しかし、今は現代。 この決して実を結ぶことのない恋愛に一生を投じた男の物語は、一般的に世知に疎い男の話だと受け止められるかもしれない。 それがどんなに美しい情景であろうとも・・・。世の中には、『実を結ばないからこそ美しい』 という恋愛もあるのです。
ISBN 4101090017 / 新潮文庫 ¥324 / 2005.02.17 fin. No.020 ▲SKIP TO TOP
天の夕顔 中河与一 (日本)
緑色の裸婦 アーウィン・ショー (アメリカ)
- 概要:
一枚の絵のために祖国ロシアを追放された画家バラノフ。 ヒトラーのドイツからも追われアメリカに渡るが・・・。
亡命生活を送る画家の悲哀を描く 「緑色の裸婦」 他六編。第二次大戦から冷戦へ。
時代を読みながら、芸術家、中年夫婦、若者たちのすがたをドラマチックな構成力としゃれた語り口で活写するショーの傑作短編集。
感想: ★★★★ 劇作家としてよりも、小説家としての彼の方が個人的には好きです。 短編という短い枠内で、これだけスピーディー、かつスマートに話を進めて行けるのが素晴らしい。無駄が見当たらない。 彼のこの頃の作品には、自己の周囲に生きる人々に対する優しい眼差しを感じることが出来るのが興味深い。表題作には思わず (^▽^笑)。 本当にやりたいことは、どこにいても出来るもの。そう教えられた、ユーモア溢れる作品でした。
ISBN 4087602001 / 集英社文庫 ¥429 / 2005.02.17 fin. No.019 ▲SKIP TO TOP
消えさりゆく物語 北 杜夫 (日本)
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概要:
過去から未来へと行き交う意識がつむぎだす、思いがけない幻想。都会の高層ビル群は緑なす密林に姿を変え、公園の木馬は黒い駿馬となって戦時下のドイツを駆け抜ける。
夕刻のベンチは一瞬のうちに満天の星屑に包まれ、孤独な老人は幼い子供に還って箱根の森に佇む―。
死と消滅の気配を色濃く漂わせながらも、独特の抒情とユーモアが不思議な幸福感をもたらす、8つの奇妙な物語。
感想: ★ 奇妙な幻覚、夢魔の作用によって紡ぎだされた8編を収録。この短編集を刊行する際作者自身が作品を選んだらしいのですが・・・ ( ̄Λ ̄)ゞ ムムム 同じようなエピソードの物語ばかりが集まっているので、収録されている物語を一気に読むと 『またか!』 的な気分に苛まれます。 暗い物語も多かったせいか、読了感もイマイチでした・・・。
ISBN 4101131538 / 新潮文庫 ¥362 / No.018 ▲SKIP TO TOP
Sudden Fiction 超短編小説70 ロバート.S/ジェームズ.T 編集 (アメリカ)
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概要:
SUDDEN (サドン)--- 『いきなり』 『だしぬけ』、『おもいがけない』、ぴんと張りつめて、油断のならない。
長編小説が200ページかかってやることを、たった1ページでしてのける、とびきり生きのいいショートショートのアンソロジー。
ヘミングウェイからカーヴァー、ブラッドベリー、さらに本邦初訳の手練の佳品がぎっしり詰まった576ページ。
感想: ★★★★★ 一口にショートショートといっても、こんなにもいろいろな見方があるんだなぁ・・・と素直に感心。 『ショートショートとは何か?』 という質問に対する各作家の意見を書き連ねた 『覚え書』 なるものが巻末に収められているのですがそれがまた面白い! 純粋に自分の思ったことを綴っている作家もあれば、あからさまに他作家を非難している作家もいる・・・。 ああ、文学とはこういう世界なんだなぁ。いろんな意味で、良い勉強になりましたぁ♪
ISBN 4167254026 / 文春文庫 ¥781 / 2005.02.06 fin. No.017 ▲SKIP TO TOP
魂がふるえるとき 宮本輝 (日本)
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概要:
多彩で心打つ小説を次々に紡ぎ出してきた宮本輝氏。その宮本氏自身が、かつて愛読し魂を揺さぶられた短篇小説の名作を選んで編んだ読者の皆さんへの 『物語の贈り物』。
吉行淳之介、川端康成、武田泰淳、永井荷風らの、意外な作品も含む16篇を収録。文春文庫創刊30周年記念企画。
感想: ★★★★★ 『心に残る物語 日本文学秀作選 』 というサブタイトルで、当代きっての名作家が若い人たちに読んでもらいたい往年の名作家たちの短篇を責任編集したもの・・・ がこの本書。 第一回は 宮本輝 編 で始まり、このあと 浅田次郎 編、山田詠美 編、沢木耕太郎 編 と続いてゆく。やはり選者の影響か、読んでいて眼前に美しい情景が浮かんでくる、そんな綺麗な物語が多いのが印象的。 複雑多岐にわたる人間の心の中に、何らかのカタチで響いてくる・・・ そんな、大人の秀作ばかりです。
ISBN 4167348179 / 文春文庫 ¥543 / 2005.01.03 fin. No.016 ▲SKIP TO TOP
草原の記 司馬遼太郎 (日本)
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概要:
史上空前の大帝国をつくりだしたモンゴル人は、いまも高燥な大草原に変わらぬ営みを続けている。少年の日、蒙古への不思議な情熱にとらわれた著者が、遥かな星霜を経て出会った一人のモンゴル女性。
激動の20世紀の火焔を浴び、ロシア・満洲・中国と国籍を変えることを余儀なくされ、いま凜々しくモンゴルの草原に立つその女性をとおし、遊牧の民の歴史を語り尽くす、感動の叙事詩。
感想: ★★★★★ モンゴルへ永年の愛情を持ち続けた著者の外遊記でもあり、また偉大なる女性の記録。 かつて、ここからチンギス=ハーンが世に出、世界の大帝国を築き上げたモンゴルには今でも同じ大草原が広がっているのです。 時代に翻弄されながらも、強く、大きく生きぬいた偉大なる女性・・・。ラストは、流れる涙をどうする事も出来ませんでした。 モンゴル高原は、きっと天に近いところなんですね(笑)
ISBN 4101152373 / 新潮文庫 ¥400 / No.015 ▲SKIP TO TOP
フィッツジェラルド短編集 F.S.フィツジェラルド (アメリカ)
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概要:
抜群の感受性で時代の寵児となり、真摯に人生の理想を追った人フィツジェラルド。
『人生は崩壊の過程である』 となぜ彼は書くことになるのか。ニューヨークの上流家庭に生まれた青年アンスンを憧れと揶揄をもって描いた 『金持ちの御曹司』 、大恐慌後、パリに静かな悔恨と不屈の魂で佇むチャーリーに熱い思いを託した 『バビロン再訪』 等、彼自身と当時のアメリカを彷彿とさせて魅力的な6編。
感想: ★★★ 物の本質を、矛盾する二面の併存というカタチで捉えるという、著者の特徴を色濃く読み取れる作品集。 同質だが相容れない二面性を比較することによって、それぞれがとても面白い対比を成しています。 夢の大国アメリカや、美しいパリの違った一面を垣間見ることが出来る、なかなか興味深い作品集です。
ISBN 4102063021 / 新潮文庫 ¥514 / 2004.12.18 fin. No.014 ▲SKIP TO TOP
タイル 柳美里 (日本)
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概要:
離婚した妻への未練、やり場のない欲望を抱えながら、マンションの部屋中にタイルを敷き詰める男。
金と時間を持て余し、盗聴器に聞き入る老人。タイル貼りの異様な部屋に招かれた女流作家の目の奥で、危険信号が激しく点滅しはじめた---。
都会にひそむ狂気と殺意を描きだして絶賛されたホラー純文学の傑作。
感想: ★★★★★ こういう狂気は、現代病 ・・・とでも言うのですかね? 近年になって増加した殺人事件。 それらの背景には、この物語のような、暗く、鬱屈とした狂気が横たわっているような気がしました。キャー! コワイィィィ!! o(;><)o
ISBN 4167621037 / 文春文庫 ¥390 / 2004.11.09 fin. No.013 ▲SKIP TO TOP
手と目と声と 灰谷健次郎 (日本)
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概要:
『長いあいだ、ぼくは抵抗してきたよ。 長い抵抗だった』 --- 在日朝鮮人水泳選手のきびしい生きざまが、中学生たちの心を熱く揺さぶる 『水の話』。
沖縄を旅する少女の心情を細やかに綴った 『手』。インドネシアで出会った子どもたちの澄みきった瞳が印象的な 『目』。
そして、障害を持つ子どもたちが内に秘めた豊かな世界を生き生きと描き出す 『声』。さまざまな人生、さまざまないのちを真摯に見つめ、読む人の心に豊かな光を宿らせる、宝石のような四編の小品。
感想: ★★ 『水の話』 、『手』 、『目』 、『声』 ・・・。様々な人生・様々な生き様を、この一冊の短編集で知ることが出来ました。 どちらかと言うと、子供向け・・・かな?
ISBN 4043520093 / 角川文庫 ¥419 / No.012 ▲SKIP TO TOP
ベロニカは死ぬことにした パウロ・コエーリョ (ブラジル)
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概要:
ベロニカは全てを手にしていた。若さと美しさ、素敵なボーイフレンドたち、堅実な仕事、そして愛情溢れる家族。
でも彼女は幸せではなかった。何かが欠けていた。ある朝、ベロニカは死ぬことに決め、睡眠薬を大量に飲んだ。
だか目覚めると、そこは精神病院の中だった。自殺未遂の後遺症で残り数日となった人生を、狂人たちと過ごすことになってしまったベロニカ。
しかし、そんな彼女の中で何かが変わり、人生の秘密が姿を現そうとしていた---。全世界45ヵ国、500万人以上が感動した大ベストセラー。
感想: ★★★★ 精神病院の内部を仔細に描き、『狂人とは?』 という疑問を、新たに考えさせてくれました。誰が狂っていて、誰が狂っていないのかなんて、一体誰が判断するのだろう? 物語の終わり方には少々・・・? なところもあったけれど、いろいろなことを学ばせてくれた、一風変わった作品です。
ISBN 4042750052 / 角川文庫 ¥552 / No.011 ▲SKIP TO TOP