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概要:
えたいの知れぬ青年が自動車教習所の受付を訪ねる。いつも眠たげな女がその対応をする。書類も整わないうちに、男は恋に落ちる。
二人連れ立って旅に出る。男は帰りの船中でカメラを拾う。フィルムを撮り切ってしまわねば・・・。闇雲に人のカメラでシャッターを切る。
現像に出してみれば、その部分は無い。しかしそれが真に撮りたかった世界。沈黙する行間に、プリントされなかったネガに、無限のメッセージをこめた傑作!
感想: ★★ 昔読んだはずなのに、物語を全く覚えていませんでしたぁ (;´▽`a`` 生まれつきの疲労感を持った人々の、たわいのない挿話。いやぁ〜、世の中にはいろいろな人がいるものですね(笑)
ISBN 408760294X / 集英社文庫 ¥360 / No.010 ▲SKIP TO TOP
カメラ ジャン=フィリップ・トゥーサン (フランス)
ザ・ウイスキーキャット C.W.ニコル (イギリス)
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概要:
これは酒飲みのための童話である。単純で、新鮮で、意表をつき、みずみずしくて、手厚い物語である。
酒ぎらいのネコが昼も夜も眼を光らせてスコッチの樽を守るというこの物語には鋭い観察眼とほのぼのとしたユーモアがある。
そして、人にも酒にもすでに失われてしまったか、今失われつつある ”まっとうさ” をそれとなく訴えている。
君が一人前のドリンカーならば今夜はバーへいかないで、書斎でチビリチビリ一人酒をやりつつこの本を読むことだね。
感想: ★★★ スコッチの樽を守る立場のネコなのに大の酒嫌い!とは いやはや何とも (笑) さまざまなユーモアや、挿絵として挿入された写真に思わずほのぼの・・・。 ネコの視点から見た職人の世界のまっとうさを描き出した、心温まる物語です。
ISBN 4061840576 / 講談社文庫 ¥370 / No.009 ▲SKIP TO TOP
だれかに似た人 阿刀田高 (日本)
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概要:
人生のさまざまな分岐点を、その都度どちらへ行くか決断しながら通過してきた男と女。
湖畔で偶然出会った二人は、またもやある決断を迫られる・・・(『Y字路の町』)。
おとなしい新妻は、しかし閨房に入るとかたくなに夫を拒んだ。彼女の精神外傷(トラウマ)とは・・・?
(『無邪気な女』)。だれかに似ているが、だれとは特定できない男女の物語。短編の名手による精妙な連作トリック・ミステリー10編。
感想: ★★★ たくさん本を読んだ後の息抜きには最適ですね。彼の作品の中では、特にこれがいい!というモノはありませんが、逆に、これはダメだ!という作品もありません。 だから、安心して読めるのです。いつも安定した短編集を提供してくれます。
ISBN 4101255091 / 新潮文庫 ¥400 / No.008 ▲SKIP TO TOP
光と影 渡辺淳一 (日本)
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概要:
一人は片腕を切断されて廃兵となり、一人は不自由ながら腕がついたまま、栄光への道をまっしぐらに進む。カルテの順序という小さな偶然がわけた人生の光と影を、的確なタッチで構築した直木賞受賞作
『光と影』 に、『宣告』 『猿の抵抗』 『薔薇連想』 という人生の皮肉を巧みに描き出した三篇を加えた卓抜な作品集。
感想: ★★★★★ 直木賞受賞作ももちろん良かったのですが、個人的には 『薔薇連想』 が好みです。 破壊的な美しさの中に、純粋な文学を見ました。どうしたらこんなに美しい物語が書けるのだろう。 ・・・って、書いてもないのに言っちゃダメ? (;´▽`a``
ISBN 4167145014 / 文春文庫 ¥429 / No.007 ▲SKIP TO TOP
ウエンカムイの爪 熊谷達也 (日本)
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概要:
---殺られる! 死んだふりをしても無駄だ。食われてしまう・・・。
北海道で撮影旅行中の動物写真家・吉本はある日、巨大なヒグマに襲われ、九死に一生を得る。
彼を救ったのは、クマを自在に操る不思議な能力を持つ謎の女だった。その女を捜し求める吉本が見たものとは?
野生と人間の壮絶な戦いを通して、生命の尊厳と自立を描いた傑作。第十回小説すばる新人賞受賞作。
感想: ★★★★ 基本的に動物小説とか大好きなんですけど、この本は特に良かったように思います。 読んでいるうちにどんどん物語に引き込まれ、最後まで読み終わったときには、自分自身、涙を流していることさえ気付きませんでした。う〜ん、秀作!!
ISBN 4087472302 / 集英社文庫 ¥400 / No.006 ▲SKIP TO TOP
ア・ルース・ボーイ 佐伯一麦 (日本)
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概要:
loose [lu:s] a. @緩んだ Aずさんな Bだらしのない ・・・D自由な
--- 英語教師が押した烙印はむしろ少年に生きる勇気を与えた。
県下有数の進学校を中退した少年と出産して女子高を退学した少女と生後間もない赤ん坊。
三人の暮らしは危うく脆弱なものにみえたが、それは決してママゴトなどではなく、生きることを必死で全うしようとする崇高な人間の営みであった。三島賞受賞。
感想: ★★★★ 生きるために仕事する。そんなの当たり前のことなのに・・・ と思うかもしれませんが、この世の中に純粋にそれを実行している人は、一体どのくらいいるのだろう・・・? 大切なことを思い出させてくれた作品です。
ISBN 4101342113 / 新潮文庫 ¥514 / 2005.4.20 fin. No.005 ▲SKIP TO TOP
白痴 坂口安吾 (日本)
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概要:
白痴の女と火炎の中をのがれ、『生きるための、明日の希望がないから』 女を捨てていくはりあいもなく、ただ今朝も太陽の光がそそぐだろうかと考える。
戦後の混乱と頽廃の世相にさまよう人々の心に強く訴えかけた表題作など、自嘲的なアウトローの生活をくりひろげながら、『堕落論』の主張を作品化し、観念的私小説を創造してデカダン派と称される著者の代表作7編を収める。
感想: ★★★★★ 立派な堕落論。特権意識や処世術なんて必要ない・・・。言ってしまえば、作者は究極のロマンチストなのかもしれない。 人間、こうもありたいものですね。
ISBN 4101024014 / 新潮文庫 ¥400 / No.004 ▲SKIP TO TOP
春琴抄 谷崎潤一郎 (日本)
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概要:
盲目の三味線師匠春琴に仕える佐助の愛と献身を描いて谷崎文学の頂点をなす作品。
幼い頃から春琴に付添い、彼女にとってなくてはならなぬ人間になっていた奉公人の佐助は、後年春琴がその美貌を弟子の利太郎に傷つけられるや、彼女の面影を脳裏に永遠に保有するため自ら盲目の世界に入る。
単なる被虐趣味をつきぬけて、思考と官能が融合した美の陶酔の世界をくりひろげる。
感想: ★★★★★ 美しくも哀しい師弟愛。 『痴人の愛』 は、たぶん普通の人から見たら、愚かな愛。この物語も、ある意味愚かかもしれない。 でも、これこそが究極の純愛。とても美しく、そして危うい。そしてこの作品、日本語がとても美しい 。日本が好きだとは言い切れないけれど、やはり日本語は好きだ。そう思わせてくれた作品です。
ISBN 4101005044 / 新潮文庫 ¥286 / No.003 ▲SKIP TO TOP
日蝕 平野啓一郎 (日本)
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概要:
現代が喪失した 『聖性』 に文学はどこまで肉薄できるのか。舞台は異端信仰の嵐が吹き荒れる十五世紀末フランス。
賢者の石の創生を目指す錬金術師との出会いが、神学僧を異界に導く。洞窟に潜む両性具有者、魔女焚刑の只中に生じた秘蹟、めくるめく霊肉一致の瞬間。
華麗な文体と壮大な文学的探求で『三島由紀夫の再来』 と評され、芥川賞を至上最年少で獲得した記念碑的デビュー作品。
感想: ★★★ ほっとしますね。意識的にそうしたのだろうけど、ルビの使い方がとても美しい。 日本語の味わい深さを再認識させてくれた作品です。
ISBN 4101290318 / 新潮文庫 ¥400 / No.002 ▲SKIP TO TOP
夫婦茶碗 町田康 (日本)
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概要:
金がない、仕事もない、うるおいすらない無為の日々を一発逆転する最後の秘策。
それはメルヘン執筆。こんな <わたし>に人生の茶柱は立つのか?!
あまりにも過激な堕落の美学に大反響を呼んだ 『夫婦茶碗』 。
金とドラッグと女に翻弄される元パンクロッカー (愛猫家)の大逃避行 『人間の屑』 。
すべてを失った時にこそ、新世界の福音が鳴り響く! 日本文藝最強の堕天使の傑作二作。
感想: ★★★★★ ステキなダメ人間模様。この人の作品は基本的に好きだ。音楽と文学の共通点を垣間見せてくれるから。 絵画、映画に芝居に文学、音楽・・・。一つの作品を作るということは、『魂を紡ぐ』 ということに他ならない。 個人的には、太宰の再来だと思ってマス。
ISBN 4101319316 / 新潮文庫 ¥400 / No.001 ▲SKIP TO TOP